やばいですね。もう客観視できなくなってきてますよ。
起業の一番の敵は「視野が狭くなる」ですね。
当事者になるとどうしても自分視点で物事を考えがちになってしまいます。
幸いなことにブログを公開してからいろんな方から「会いたい」「相談したい」「手伝ってくれない?」とお声がけ頂いておりまして。おかげさまで自分でやっていない事業を客観的に見させてもらうことで自分のいまやろうとしていることも、客観視をなんとか維持できてるなぁと思ったりしています。
※ご相談などはこのページの下部からお気軽にどうぞ。
自分でも知らなかった業界の話や、課題などを知ることができて、私自身とても良い体験となってます。
ところで、相談を受けるとなんかこう・・「もやっとするなぁ」と思うことが多いです。
もやっとしたサービスの作り方
「こんな事業をやろうと思いますどう思います?」とお話を伺うことが多いのですが、「うーん、なんかモヤっとするなぁ」と感じることがよくあります。
なんというか、儲かる儲からない以前の話で。
「誰が、なんでこの商品を買うんだろう?」
が見えないというか。
なんでこうなったのか。
実は僕、めちゃ共感できるんですよね。
このモヤッとした事業ネタ、まだ自分でコードを書いて受託開発やってたときに作ってたものにすごく似てるんです。
僕はその時、こんな感じで事業アイディアが組み上がっていってたんですよね。
- 「なんとか生き残らきゃ!」とひぃひぃ活動しながら事業アイディアを探している
- あれ?もしかしてこれ、困っている人多いんじゃない?という課題に気づく
- この課題を解決したらみんな喜ぶんじゃない?と思い始める
- やった!宝の山をみつけた!
- 解決方法を考える
- よっしゃ!じゃあ作るぞ!
実際、世の中で語られる起業成功のストーリーってこんな感じだし、「ついに自分にも降りてきたぞ!」なんて思ったりしてましたね。
でも今なら言えます。「こりゃだめだー」って。
ではいったい何がだめなのかと。
まず事業アイディアを探している状態が良くない。
日常業務がイケてない状態の中から出てくる事業アイディアなんてろくなもんじゃない。
ヒィヒィ言ってる状態がもう視座が低い状態、視野が狭い状況なので。
そんな中で無理やりアイディアを探そうとしているのでどうしても重箱の隅をつついたようなネタになりがち。
なかなかアイディアが出てこない中で見つかった課題なのでもうこれが宝物なんですよね。
自分の想像の中の課題でしか無いのに。
このときの心境は正確には「課題であれ!」なんですよね。
妄想が加速していきますよね。。
楽なところから始めてしまっている
そして、自分自身エンジニアなのですぐ作れちゃうんですよ。作る段取りはわかってるのでまず着手しちゃうんですよね。
作ってると、進捗感がありますよね。でもこれ、逃げの心理なんですよね。
本当は一番最初に、この証明をクリアしなければならない。
その課題って本当にあるの?一体誰がその課題を感じているの?
ここに超注力しなければならない。だけど「やり方がわからない」とか、自分の中で理由をつけてなんか避けちゃうんですね。
それか、調査するにしても楽な方法を取りがちで。
だから、お客さんじゃない人に「こんなアイディアどう思います?」って相談しに行っちゃうんです。
相談された人は「あったらいいよね!がんばりなよ!」って言うでしょう。
波風立てるのも面倒なので。(万が一うまく行ったら応援した自分のおかげになるしね!)
※余談ですが、耳の痛い意見を言ってくれる人の中に、本当に力になってくれる人が隠れていると思います。
あと、耳の痛い意見を言ってくれる人の中には、ただ単にストレス発散をしたい人もいます。組織人に相談するとストレス発散系に当たりやすい感じがします。
これ、もしヒアリングしに行って「そんな課題は無い」とわかることが怖いという深層心理があるんじゃないかなと。自分が否定されちゃうんですよね。
果たして
「ヒアリングの結果、(お客さんじゃない)多くの人が「いいね」って言ってるサービスです!」
の出来上がり。
こうなるの、めちゃ分かります。僕は人一倍傷つきやすいのでヒアリングすらまともにしてませんでしたから。(だからわざわざ大宮までいらして僕に相談される方は、もうその時点ですごい方だと思います。)
一度進んじゃった事業、なかなか後戻りできません。
顧客がつかなくても、売上が上がらなくても、一生懸命自分と事業を肯定するような情報を集めて突き進んで行くことでしょう。
そのうち「儲かるためにやっているんじゃないんだ!」と言い始めるかもしれません。
あるあるですね・・
「自分の本当にほしい事業を作れ」の罠
顧客の課題にフォーカスしたサービスを作ることは本当に大事。
似たような事業の作り方として「自分の本当にほしい事業を作ろう!」というのがあります。
たしかにこのアプローチのほうがまだ良さげですね。
ただ、これにはちょっとした落とし穴があるんじゃないかなと思っています。
先日とあるSaaS系の社長とお話していたんですが、こんなことをおっしゃっていました。
起業して自分が必要だなと思うことをサービス化して事業にしたんだけど、なかなかスケール(事業拡大)しなかったんだよね。
というのは、自分たちみたいにきっちりやっている人たちって実はほとんどいなかったんだよ。
そこで気づいたのは、自分は世の中の実態からズレている変人だと思ってやらなければならないということなんだよね。
この話をされた社長は、僕の目から見てもめちゃめちゃマーケティングのセンスがある方。
仰っていたサービスも最終的にきっちり黒字化され、安定成長の状況に作り上げています。
ただ、彼はもっと違うサービスを取り扱っていたら、もっと早くもっと大きなビジネスを作られていたんだろうなーとやっぱり僕も思いました。
※今、彼はまさにそんなサービスを立ち上げています。
マーケティング力が強いと、なんやかんやで形にできますが、僕のようにエンジニア上がりでそこまでマーケティングが得意でない状態で始める人は、形にすることすら難しいなぁと思いました。
誰の何をどうやって
過去の記事でお話したとおり、僕が作ったイベレボやイベントクリエイトはどの市場にマッチするのかを探すのがめちゃめちゃ大変でした。
はじめはまさに暗中模索状態。
「この市場、なんかいけるやろ!」と思っては、調査し、ヒアリングし、営業する、ということをやっていました。
ただ、なんかうまく刺さらない。
そりゃそうです。「市場」という定義も曖昧。顧客のニーズも想像。
「こうなったらえぇなぁ」という希望的観測に向かって突き進んでいるので。
しかし、ラッキーなことにとある方からの叱責をきっかけに「市場の中のどの役割を担っている人のどんな課題を解決できるのか。」
つまり「誰の何を解決するのか」をまず最初に考えるようになっていきました。
(この「誰」は、本当に「誰」でして、会社とか事業部とかじゃなくて「個人」を指しています。)
例えば、イベントクリエイトの場合は、
- 常連客に向けてファミリーセールを開催するアパレルブランドのマーケティング部門にいて、実際にセールの管理を行う現場担当の女性
とかが「誰」の出発点になります。
彼女は
- セールの運用は非常に属人的であり、毎回この時期は通常業務に影響を与えている
→残業がとても増えるとか、業務のミスが発生しがちとか、中期で動いている案件が止まるとか - 更に、セール担当者の引継ぎが面倒
→過去に開催したイベントの運用内容が散逸してしまっている
などの課題があります。
更に深く彼女の状況に突っ込んでいきましょう。
彼女は現状をなんとかしたいと思いつつ、様々な解決方法やツールを探しますが
- ツールの使い方を学習するのがそもそも面倒
→そうこうしているうちにセールが終わる - ツール導入フローの問題
→上長を説得して、予算を確保し、社内稟議を通さなければならない。そもそもこれが面倒だし、そうこうしているうちにセールが終わる
という状況に直面しました。
これで、彼女には
- セールの運用業務をめちゃめちゃ簡単にするツール
- そのツールは速攻で使うことができ、効果が実感できる
- 稟議をめちゃめちゃ通しやすくする施策
→値段が安い、強みが簡単に理解できる、稟議用の資料がある、見積もりを速攻で出す、類似事業での実績を出す
とかのソリューションを提供する形になります。
イベントクリエイトは、法人でイベントの現場運用を担当される多くの方が
- 女性
- ITに詳しいわけではない
という状況ですので、UI、デザイン、機能のネーミングに至るまでこだわって作ってました。
- UIに関しては「極力選択肢をなくす」こと。
- デザインに関しては「柔らかく、女性が抵抗感なく感じられる色味や余白があること」
- 機能のネーミングは、「専門用語を使わない。機能のヘルプはその場ですぐに参照できるようにすること」
このようにすることで、現場からの支持が高いサービスを作ることができたのです。
※実はここで「お財布問題」が発生するのですがそれはまたの記事で。
よく「顧客にフォーカスしろ!」「ペルソナを作れ!」とかいろいろ言われるかと思いますが、実際にお客探しをしていく中でその重要性がわかってきました。
でもシンプルにまとめると「それって、誰の何を解決してるの?」という質問に集約されます。
この言葉、「僕の発明や!」なんて実はちょっといい気になってたのですが、僕の尊敬する経営者の方が、もう何年も前からシンプルにわかりやすく整理されていて。。
まさに「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」ですね。
※ちなみに私はまごうことなき「愚者」です。
で「愚者が賢者かのごとく歴史に学ぶには」という記事もいつか書くつもりです。(賢者になるには一定量の愚者経験が必要なんじゃないかなと)
顧客にフォーカスしたサービスの作り方
マーケティングをずっとやってきている人はそのあたりの勘所があるので、想像でのペルソナも、その人が抱えてる課題も、わりと外さないでいけると思います。
※課題のパターンは実はあまり多くないのではないかなと最近思ってます。
とはいえ、僕のようなマーケティングの知見があまりないエンジニア上がりの経営者なんかは、顧客のペルソナを作ってその検証作業を行って・・というのは、めちゃめちゃ大変で時間がかかるわけです。(そして、おそらくペルソナも課題もズレまくっていると思われます。)
では、どうすればよいのかと。
話は変わりますが、先日、僕の尊敬するある経営者のかたとサシ飲みした時に、ふとこんな質問をしてみたんですよね。
「〇〇さん、もしいま一文無しになっちゃったらどうやってお金稼ぎます?」
そしたら、こんな回答が。
「んーそうだなー。金持ちのところに行って「なんでもいいから手伝わせて」ってお手伝いさせてもらうかな」
衝撃を受けました。
シンプルな回答ですが、実はこれ、商売の原理原則が詰まっていると言っても良いかもしれません。
この回答のすごいところはいくつかあります。1つ目は
- 金持ちのところに行く
というところ。
「金持ち」は、財布の紐がゆるいわけではありません。
しかしながら、自分の課題解決に対し適切な報酬支払うことをいとわない人たちです。
事業でいうと「市場の選択」に相当するのかなと。
2つ目のすごいところは
- 自分のスキルや経験をスタート地点にしていないこと
です。
自分のスキルを誰かに売ろうとすると、売り先を探すのに大変苦労します。
「買ってください」というスタンスでアプローチをすると、まぁ買い叩かれますよね。
「なんでもいいから手伝わせて」という発言は、「解決したい課題を教えて」という問いかけなのです。
ここで出てきた課題すべてが「商売のネタ」。あとはそれをなんとか解決する。
自分のスキルセットが使えるなら使うし、スキルセットが使えなくても周りからかき集めて解決しちゃう。
この社長、創業10年弱で100億企業を作った方です。
言うまでもなく、凄まじいスキルと経験を持っています。
儲かりそうなアイディアなんてすぐに何十も思いつくと思います。
でも、それを出発点にしない。あくまでも市場を、お客さんを出発点にしているのですよね。
上場したり、数十億で事業売却したりといった企業の中にもお客さんが出発点となってる創業社長が何人もいます。
https://newspicks.com/news/1001298/ より
もしかしたら成功した創業者のほとんどがそうなのかもしれません。
孫正義さんも市場の選択に2年費やした、三木谷浩史さんも市場の選択に1年費やしたそうで。
何をするか、より誰を助けるか、はどうも重要な感じがします。
なので、顧客にフォーカスした事業を作る最も確実かつシンプルな方法は
- 「お客さんにしたい人を決める」
- 「お客さんにしたい人に課題を聞きにいく」
なんだろうなと思います。